住宅取得等資金の贈与は2026年12月31日まで。非課税枠と登記持分の決め方
家を買うとき、親から資金を出してもらう場面は珍しくありません。頭金の一部を援助してもらう、あるいは全額を出してもらう。ここで手続きの順番と登記の書き方を間違えると、援助のつもりだったお金に贈与税がかかります。しかも気づくのは、たいてい税務署から書類が届いたあとです。
住宅資金の非課税枠は、2026年12月31日が期限
父母や祖父母から住宅の取得資金をもらう場合、一定の要件を満たせば贈与税がかからない制度があります。省エネ等住宅であれば1,000万円まで、それ以外の住宅であれば500万円までが非課税です。
この制度の現行の適用期限は2026年12月31日で、2026年9月の時点で、その先の延長は決まっていません。過去には何度も延長されてきた制度ではありますが、教育資金の一括贈与の非課税措置が2026年3月31日で延長されずに終わったことを考えると、当然に続くと見込むのは危うくなっています。使う予定があるなら、年内の贈与で間に合うかどうかを先に確かめてください。
年110万円の基礎控除とは別枠で、重ねて使えます。相続時精算課税と組み合わせることもできます。省エネ等住宅で1,000万円の非課税枠に基礎控除110万円を足せば、1,110万円まで税額が出ません。なお住宅取得等資金の贈与では、贈与する親が60歳未満でも相続時精算課税を選べるという特例があります。通常は60歳以上という年齢の制限がかかるところなので、若い親世代からまとまった額を渡す場合には検討の余地があります。
要件を一つでも外すと、全部が使えない
この制度は要件が細かく、しかもすべてを満たす必要があります。実務で引っかかりやすいところを順に見ていきます。
渡す側と受け取る側
渡す側は受け取る人の直系尊属に限られます。父母、祖父母です。配偶者の親は含まれません。妻の親から夫が受け取る形にすると使えないので、妻が受け取って妻の持分にする、という組み立てが要ります。養子縁組をしていれば養親も直系尊属になります。
受け取る側は、贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上であること、贈与を受けたときに日本国内に住所があること、その年の合計所得金額が2,000万円以下であることが必要です。取得する住宅の床面積が40㎡以上50㎡未満の場合、所得の上限は1,000万円まで下がります。共働きで所得の高い年に受け取ると外れることがあります。
過去にこの特例を使っているかどうかも要件です。平成21年分から令和5年分までの贈与税の申告でこの非課税の適用を受けていると、原則として再度は使えません。それ以降に枠の一部を使っている場合は、その額を差し引いた残りが限度額になります。
住宅の性能と広さ
1,000万円の枠を使うには、その住宅が「省エネ等住宅」に当たる必要があります。この基準は2024年1月1日以後の贈与から引き上げられました。新築であれば、断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上、いわゆるZEH水準を満たすことが求められます。かつては断熱等性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上のいずれかで足りていたので、「省エネ住宅だから1,000万円使えるはず」という理解のままだと外れます。ただし2023年12月31日までに建築確認を受けた住宅、または2024年6月30日までに建築された住宅については、従前の基準で判定されます。
床面積は40㎡以上240㎡以下で、その2分の1以上が居住用であることが必要です。都心の狭小物件や、店舗併用の住宅では確認が要ります。
中古住宅を買う場合は、新耐震基準に適合していることも要件です。登記簿上の建築日付が1982年1月1日以後であれば満たしたものとして扱われ、それより古い建物では耐震基準適合証明書などの書類が必要になります。契約前に確認しておかないと、引き渡しの直前になって書類が揃わないことがあります。
翌年3月15日という期日
最もつまずきやすいのが期日です。贈与を受けた年の翌年3月15日までに、もらったお金の全額を住宅の取得等に充て、その家に住んでいる必要があります。工事の遅れで引き渡しが4月になった、という理由でも要件を満たしません。新築の場合は、同日までに屋根またはその骨組みができあがり、建物として認められる状態に達していればよいとされていますが、いずれにせよ工程を見ながら贈与の時期を決めることになります。やむを得ない事情で入居が間に合わない場合も、遅滞なく居住する見込みであることが求められます。
親や親族から買う場合は使えない
見落とされがちな除外規定があります。配偶者や親族など特別の関係がある人から住宅を取得した場合、あるいはそうした人に新築や増改築を請け負わせた場合は、この制度の対象外です。親が持っている家を子が買い取る、親族が経営する工務店に建ててもらう。どちらも実務でよくある形ですが、この非課税措置は使えません。
税額がゼロでも、期限内の申告が要る
ここが最も多い失敗です。非課税枠に収まっているから何もしなくていい、という理解は誤りです。
この制度は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに贈与税の申告書を提出することが適用の条件になっています。期限内に出していなければ、原則として非課税の適用が受けられず、贈与税がそのままかかります。1,000万円の贈与なら、直系尊属からの特例税率でも177万円の税額です。
申告書には、戸籍謄本、住宅の登記事項証明書、売買契約書または工事請負契約書の写しなどを添えます。省エネ等住宅として1,000万円の枠を使う場合は、住宅性能証明書や建設住宅性能評価書の写しなど、性能を証明する書類も必要です。取得後に発行を依頼しても間に合わないことがあるため、契約の段階で売主や施工会社に確認しておいてください。
なお、この非課税の適用を受けた金額は、贈与した親が亡くなったときに相続財産へ足し戻す対象になりません。亡くなる直前の贈与であっても同じです。
出したお金と登記の持分がずれると、そこで贈与になる
持分は負担割合で決める
非課税の手続きを正しく踏んでも、登記の書き方で贈与税が発生することがあります。共有名義にする場合、持分は実際に負担した金額の割合で決めるのが原則だからです。
4,000万円の物件を例にします。夫が自己資金1,000万円と住宅ローン2,000万円、妻が自己資金500万円、そして夫の親から500万円の贈与を受けたとします。夫の負担分は自己資金と借入と親からの贈与を合わせて3,500万円、妻は500万円ですから、持分は夫が8分の7、妻が8分の1になります。
ここで、なんとなく2分の1ずつで登記したとしましょう。妻の持分2,000万円に対して妻が負担したのは500万円ですから、差額の1,500万円は夫から妻への贈与とみなされます。基礎控除110万円を引いた1,390万円に対して贈与税がかかり、夫婦間の贈与は一般税率が使われるため、税額は450万円ほどになります。
親からの贈与を受けたのが夫であれば、その分は夫の負担として計算します。妻の親から妻が受けた分は妻の負担です。誰が誰から受け取ったのかを、贈与の時点ではっきりさせておいてください。振込の記録が残る形にしておくと、あとで説明しやすくなります。
持分の計算に含めるのは、物件そのものの取得に充てた金額です。仲介手数料や登記費用、火災保険料といった諸費用の扱いは判断が分かれるところですので、金額が大きい場合は事前に確認しておくのが安全です。
もし誤った持分で登記してしまっても、気づくのが早ければ手はあります。贈与税の申告期限を迎える前であれば、錯誤による更正登記で本来の持分に直せる余地があります。手間も費用もかかりますが、贈与税が確定してしまう前に動けるかどうかで結果が変わります。
ローンの肩代わりと繰上返済
子の住宅ローンを親が代わりに返済した場合、その金額は親から子への贈与です。毎月の返済を親の口座から出している、ボーナス時期にまとまった額を繰上返済してもらった。どちらも同じ扱いになります。年110万円を超えれば申告が必要です。
夫婦の間でも起こります。妻名義のローンを夫が返済すれば、夫から妻への贈与です。名義と返済の実態がずれていないかは、離婚や住み替えの場面で問題になることもあります。
親から借りる形にするなら
返済のための資金を親から借りるという形にするなら、貸し借りであることを示す必要があります。金銭消費貸借契約書を作り、返済期間と利率を定め、実際に返済の記録を残す。返す当てのない借入や、返済の実態がないものは贈与とみなされます。
買わずに、親の不動産を使う・引き継ぐ
親の土地に家を建てる
親が持っている土地に子が建物を建てる、という形も多く見られます。この場合、土地を無償で使わせてもらうことになりますが、そこに贈与税はかかりません。個人間で地代を払わずに土地を使う関係は使用貸借とされ、借地権の価額はゼロとして扱われるためです。地代を払わないほうがかえって安全、という点は覚えておいてください。固定資産税相当額程度の負担であれば、使用貸借の範囲とされます。
ただし、その土地は親の財産のまま残り、相続のときに評価の対象になります。ここで小規模宅地等の特例が使えるかどうかは、親と生計を一にしているかどうかで結論が変わります。親が別の場所で暮らし、生計も別という最も多い形では、その土地は被相続人の居住用でも生計を一にする親族の居住用でもないため、特定居住用宅地等には当たりません。建てる前に確認しておく必要があります。
ローンごと引き継ぐ
親が持っている賃貸物件や自宅を、住宅ローンの残債ごと子に渡す。この形は負担付贈与と呼ばれます。
通常、不動産を贈与したときの評価は相続税評価額で行いますが、負担付贈与の場合は通常の取引価額で評価します。相続税評価額は市場価格より低いことが多いため、この違いは大きく出ます。時価3,000万円、相続税評価額2,100万円の物件に1,000万円のローンが付いているケースなら、贈与税の対象になるのは時価から債務を引いた2,000万円です。相続税評価額で計算できると考えていると、想定の倍近い税額になります。
加えて、債務を引き受けてもらった親の側には、その金額で譲渡があったものとして所得税がかかる場合があります。そもそも債務者を変更するには金融機関の承諾が必要で、実務では通らないことも少なくありません。税の話をする前に、借入先に確認するところからです。
夫婦の間の2,000万円
婚姻期間が20年を超える夫婦の間では、居住用の不動産またはその取得資金の贈与について、2,000万円まで控除を受けられる制度があります。基礎控除110万円と合わせて2,110万円までです。同じ配偶者からは一生に一度だけ使えます。贈与を受けた年の翌年3月15日までにその不動産に住み、その後も住み続ける見込みであることが必要で、申告も要件です。
これから家を買う場面より、すでに持っている自宅の名義を動かす場面で使う制度です。名義を移すこと自体に登記の費用と税がかかりますし、配偶者には相続税の税額軽減という別の制度もあります。税負担だけを見て判断すると損をすることがあります。
契約前・登記前・翌年3月15日。飛ばすと戻れない3つの関門
ここまでを購入の流れに沿って並べると、次の順番になります。
物件を決める前に、誰がいくら出すのかを固めます。親からの援助があるなら、誰から誰へ渡すのかもここで決めます。次に、その物件が非課税制度の要件に合うかを確認します。床面積、省エネ性能の証明が取れるか、中古なら建築年、売主が親族でないか。契約の段階で確かめておかないと、あとから変えられません。
資金の移動は、記録が残る形で行います。振込にして、通帳に履歴を残す。手渡しは避けてください。贈与契約書を作っておけば、いつ、誰から誰へ、いくら渡したのかが明確になります。
登記の持分は、実際の負担割合で決めます。司法書士に持分を伝える前に、負担の内訳を書き出して確認してください。
そして翌年の2月1日から3月15日までに、贈与税の申告をします。税額がゼロでも提出します。
同じ500万円でも、渡す時期、受け取る人、登記の書き方、申告の有無によって、税額はゼロにもなれば50万円近くにもなります。物件探しと並行して、資金の出どころを整理しておいてください。誰がいくら出すのかが決まっていれば、いくらまでの物件を検討できるのかもはっきりします。
ご購入を検討中で資金計画の整理が必要な場合は、ご相談ください。ご希望の条件と、ご自身と親御様が用意できる金額をお聞かせいただければ、購入可能な価格帯と物件の選択肢をご説明します。贈与税や制度の適用可否に関する税務のご相談は、提携する税理士がお受けします。
出典:国税庁タックスアンサーNo.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税、No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除、国土交通省住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置