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不動産賃貸の「24時間サポート」は本当に必要!?誤解の背景と“本来の役割”を説明します!

賃貸物件を探していると、「24時間サポート」やこれに似た名称のサービスを見かける機会が増えてきました。

「24時間サポート」とは、入居者が水漏れや鍵の紛失、設備の不具合といった生活トラブルに直面した際、休日や深夜・早朝でもコールセンターが状況を聞き取り、応急対応や業者手配、管理会社への報告などの初動対応を行う支援サービスのこと。

料金は事業者や物件により異なりますが、概ね年間1~2万円(月額1,000円前後)が一般的です。

ところが最近では、「強制加入なの?」「火災保険の付帯サービスでよくない?」「自治体の窓口相談で十分では?」といった疑問の声がSNSで目立つようになりました。

たしかに、火災保険の付帯サービスには“駆けつけ対応”が無料で提供されることもありますし、自治体の生活相談窓口で簡易的な案内を受けられることもあります。

こうした既存サービスとの“重複”が、利用者が必要性を感じにくい理由の一つになっているのは確かでしょう。

しかし、賃貸の管理体制や家賃の仕組みを丁寧に見ていくと、24時間サポートの導入には、一般の入居者からは見えにくい“構造的な合理性”があることも分かってきます。

本稿では、その背景を整理しつつ、入居者目線でのメリットや注意点について考えてみたいと思います。

24時間サポートとはどんなサービスか――“初動対応”に特化した仕組み

まず整理しておきたいのは、このサービスが「費用を補償する保険」ではなく、“困ったときに必ず連絡がつく初期対応の窓口”だという点です。

鍵を失くした、水が止まらない、設備から異音がする・・・こうしたトラブルは時間を選びません。休日や深夜・早朝に起きた場合、どこへ連絡すればよいのか分からず不安になる方も多いでしょう。

24時間サポートは、こうした突発トラブルに対して、必ずコールセンターが応対し、状況整理と応急処置の案内、必要に応じて業者手配や管理会社への報告まで一連の流れを担います。

火災保険の付帯サービスにも似た仕組みがありますが、管理会社と連携して一連の対応を行う仕組みにはなっていない場合が多く、物件ごとに対応が分かれます。

また自治体の行政サービスは案内や助言が中心で、実作業の手配や緊急駆けつけまでは原則として行いません。

つまり、「24時間いつでも連絡がつく」「実際の対応まで一気通貫でつながる」という仕組みは、このサービス特有の役割だと言えます。

さらに、近年増えている外国人入居者にとっては、「どこへ連絡すればよいか?」の判断が難しいケースもあります。多言語で一次対応を行う窓口があることは、管理会社・入居者双方にとってリスクを下げる意味があります。

なぜ導入が広がるのか――家賃設定と管理会社の構造を見ると見えてくるもの

ここで視点を変え、賃貸物件の管理体制を考えてみましょう。

家賃は周辺相場だけでなく、運営経費・税金などを差し引いた“オーナーの利益”も踏まえて設定されます。

その中で、管理会社に支払うPMコスト(管理委託費)は家賃に直接影響する重要な要素です。

もし管理会社が休日・夜間を含む24時間体制を自社だけで構築しようとすれば、スタッフ確保・シフト管理・緊急対応体制の構築などでPMコストが大幅に増えます。それは家賃の上昇につながり、結果的に入居者負担が大きくなるでしょう。

そこで多くの管理会社は、外部の専門会社が提供する24時間サポートを活用しています。

外部会社は多数の管理会社から案件を受託するため、一件あたりのコストを低く抑えられます。結果として、「管理会社が直接対応するより家賃を上げずに済む」構造が成立しています。

また、火災保険の付帯サービスや行政サービスをうまく使いこなし、必要な対応を完璧にこなせる入居者もいる一方で、すべての入居者が同じレベルで対応できるわけではありません。

先ほど触れた外国人入居者はイメージしやすいところですが、ほかにも初めての一人暮らしや高齢者の場合、火災保険の付帯サービスを正確に把握していなかったり、紹介された専門業者にうまく連絡できかったりするケースも少なくありません。管理会社への報告・相談まで意識が回らないこともあるでしょう。

理想をいえば、入居者個々人の事情や理解度にあった個別対応ができればベストですが、現実的にその体制を作ることは困難ですし、仮に実現できてもPMコストの高騰は避けられません。

つまり、個々の入居者にとっては“不要”に見えることがあっても、賃貸運営全体では“家賃を上げずに安定運営するための仕組み”として包括的に導入されている、というのが実情なのです。

それでも不満が出るのはなぜか――“説明不足の構造”と入居者が気をつけたいこと

それでも、「なぜ加入しなければいけないのか分からない」「不要なサービスを押しつけられているのでは」と感じる入居者が多いのも事実です。

原因の一つは、契約現場での説明不足にあります。

「オーナー → 管理会社 → 仲介会社 → 入居者」という流れの中で、サービス説明の役割は主に仲介会社に委ねられますが、特に繁忙期にはじっくり説明する時間が取れないことも珍しくありません。

結果的によく分からないまま契約が進み、冒頭のSNSにあったような声が生まれやすい状況です。

その意味で、仲介会社・管理会社側には、説明方法の改善が必要でしょう。

24時間サポートのサービス案内だけでなく、個々人の理解度や納得感に合わせて、加入の意味合いや類似サービスとの使い分けについても、より丁寧な説明が求められます。

現場の負担にはなりますが、長期的にこうしたサービスの有用性を入居者に正しく理解・納得してもらうことは、業界全体として有益なはずです。

いかがでしょうか

「24時間サポート」は、火災保険の付帯サービスや行政相談とは異なり、“いつ起きるか分からない生活トラブルに初動で対応する”ことに特化した仕組みです。

個々の入居者の事情によって必要性の度合いは変わりますが、管理会社の負担軽減、家賃水準の安定、外国人入居者の増加などを踏まえれば、導入が広がっている背景には一定の合理性があります。

今後は、説明の丁寧さや入居者の納得感を高める工夫が進むことで、“便利で安心なサービス”としてもう一段成熟していくのではないでしょうか。

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